「だからねえ、アンパンを食べさせなさい。半分が、それよりもうちょっと」
電話口の向こうで、くぼた先生が言った。
「歳とるとねえ、体力の回復が遅くなることあるよ。今連れて来てもブドウ糖の注射するから。
胃から摂っても同じ事。だったらおいしいの食べさせてあげてごらん、元気になるから」
受け止め方は、大きく分かれる所であろう。
教育ママゴンは淵のとんがったメガネ持ち上げて言うだろう。
「んまぁ、うちのアンドレイちゃんに…アンパン!アンパン食べさせておけば治るだなんて…、信じられませんわ!」
くぼた先生は獣医だけれど、もし学校の先生だったら、ワイシャツのボタンが外れていたり、
煙草と絵の具の匂いがしたりするな、きっと。
そんな人間味のある先生、僕らは大好き。
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