17th Mar.  2011








「危ないじゃないかっ」
「うるせえっ、とろとろ走ってんじゃねえっ」
無理な追い越しをして来たトラックとの接触は、すんでの所で回避出来た。

「前、自転車がいるだろう。見えねえのかよ」
「いいからさっさと行け、この馬鹿」
「なんだ、この野郎・・・・」
一瞬の憤怒と激昂。でも、何かが、何かが押しとどめてくれた。

そのまま車を走らせ、ダッシュボードのiPhoneで時間を確認する。
壁紙のもじょが、不思議そうにこちらを見ている。


もじょ、ごめんね。本当にごめんね、もじょ。


戻ればもじょがいる、小さな舌でいつまでも顔を舐めてくれるもじょがいる。
守るべき対象がいる、冷えた心と身体を温めてくれるもじょがいるのに。

その瞬間まで、全くの沈黙を以て、傍らに潜み、
一瞬の隙を伺っている恐ろしいものに囚われそうになった。





続く余震、物資の不足、電力の不足
安逸としていた普段の暮らしの色彩を、突然塗り替え始めた不安の数々。
人力を遥かに超える力の引き起こした災害
その同じ大きな力に、今度は1人1人が試みられている。

もじょは、自分の事も相手の事も考えない。
今在る命をしっかり受け止め、そのまま精一杯生きている。
今、今人は自我も他我も超えひとつになることが出来るか・・・

「自分は悪くないんだから・・・」
そんな事を考えた心はきっと傲慢だ。もじょの心に傲慢はない。
だから、不思議そうにこちらを見ていた。





囚われそうになったら・・・

そう、10数えてもじょの名前を呼ぼう。
いや、10もいらない。

1、2、3、もじょ!

今日、どこまでも同じ青空の下。
みんなに届け、もじょのこころ。



もじょ、ありがとう。









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