|
17th Mar. 2011 「危ないじゃないかっ」 「うるせえっ、とろとろ走ってんじゃねえっ」 無理な追い越しをして来たトラックとの接触は、すんでの所で回避出来た。 「前、自転車がいるだろう。見えねえのかよ」 「いいからさっさと行け、この馬鹿」 「なんだ、この野郎・・・・」 一瞬の憤怒と激昂。でも、何かが、何かが押しとどめてくれた。 そのまま車を走らせ、ダッシュボードのiPhoneで時間を確認する。 壁紙のもじょが、不思議そうにこちらを見ている。 もじょ、ごめんね。本当にごめんね、もじょ。 戻ればもじょがいる、小さな舌でいつまでも顔を舐めてくれるもじょがいる。 守るべき対象がいる、冷えた心と身体を温めてくれるもじょがいるのに。 その瞬間まで、全くの沈黙を以て、傍らに潜み、 一瞬の隙を伺っている恐ろしいものに囚われそうになった。 * 続く余震、物資の不足、電力の不足 安逸としていた普段の暮らしの色彩を、突然塗り替え始めた不安の数々。 人力を遥かに超える力の引き起こした災害 その同じ大きな力に、今度は1人1人が試みられている。 もじょは、自分の事も相手の事も考えない。 今在る命をしっかり受け止め、そのまま精一杯生きている。 今、今人は自我も他我も超えひとつになることが出来るか・・・ 「自分は悪くないんだから・・・」 そんな事を考えた心はきっと傲慢だ。もじょの心に傲慢はない。 だから、不思議そうにこちらを見ていた。 * 囚われそうになったら・・・ そう、10数えてもじょの名前を呼ぼう。 いや、10もいらない。 1、2、3、もじょ! 今日、どこまでも同じ青空の下。 みんなに届け、もじょのこころ。 もじょ、ありがとう。 |